朝日新聞9月27日付け社説

さて、予想通りの反応をしてくれますのが、この新聞w
期待を裏切りません!!!
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安倍内閣発足 果たしてどこへ行く
 初の戦後生まれ、52歳という若さの安倍晋三氏が首相に就任した。5年半ほどの小泉時代が終わり、久々の新内閣の発足である。
 さて、新首相は内閣の布陣にどのようなメッセージを込めたのだろうか。若さ、清新さ、チャレンジ……。残念ながら、そのどれもピンとこない。
 まず浮かぶのは「論功行賞」の4文字だ。総裁選で圧勝するまでの流れに貢献した人たちに、閣僚や党役員のポストで報いる。NHKの大河ドラマ功名が辻」の現代版かと思わせるような分かりやすさだ。
 雪崩現象のようだった党内の安倍支持をとりまとめたのは、派閥横断の合同選挙対策本部だった。その本部長の柳沢伯夫氏は厚生労働相に、事務局長の甘利明氏は経済産業相に登用された。
●論功行賞そのもの
 いちはやく安倍支持の声をあげた中堅・若手の「再チャレンジ支援議員連盟」からは、会長の山本有二氏を金融担当相に、幹事長の菅義偉氏を総務相にあてた。ベテラン議員が集まった「シニアの会」からは尾身幸次氏らが入閣した。
 アジア政策などの違和感に目をつむり、派閥をあげて安倍支持を打ち出して雪崩のきっかけをつくったのは丹羽・古賀派だった。その共同代表の丹羽雄哉氏は党総務会長の大役を得た。第2派閥の津島派では独自候補擁立に待ったをかけた久間章生氏が防衛庁長官に。
 悲哀をかこったのは、総裁選で明確な対立軸を掲げた谷垣禎一氏の派閥だ。同じく総裁を争った麻生太郎氏が外相に留任したのは、安倍氏と似た主張で論戦を盛り上げたからだろうか。
 「適材適所。老・壮・青のバランスのとれたチームにしたい」。安倍氏は人事構想をそう語っていた。首相が2番目に若いという内閣だから、バランスは老・壮に傾いたが、ベテランや中堅、政策通などが配置されたのは事実だ。でも、適材適所と言えるかとなると、今後の実績を見るしかない。
 たとえば安倍氏が苦手と言われる経済政策の陣容はどうだろう。
 景気は上向き、小泉政権が発足したころのような危機感は薄れている。なのに国の借金は800兆円を超えて膨らみ続け、少子高齢化が迫る。よほどの剛腕と説得力の持ち主が求められる状況なのだが、今回の内閣では司令塔がだれなのか、はっきりしない。
 民間から経済財政担当相に招かれた大田弘子氏は、小泉内閣における竹中平蔵氏の役割を期待されているのかもしれない。内閣の要に座る塩崎恭久官房長官日本銀行出身で、かつて「政策新人類」と呼ばれた政策通だ。ふたりとも安倍氏と同世代で、清新さは買いたい。だが、初入閣の2人に党内の族議員や官僚機構を抑え込むことができるか、未知数というよりない。
 ここが緩めば、封印されてきたバラマキが復活しかねない。尾身財務相は商工族で、松岡利勝農林水産相農水族の代表選手である。首相自身が乗り出さないとタガを締められないかもしれない。
アジア外交が心配だ
 アジア外交の立て直しは、小泉政権から引き継いだ最大の懸案だ。首相も中国などとの関係修復に意欲を示している。だが、この人事を見る限り、果たして本気なのかと疑いたくなる。
 安倍氏は、歴史認識靖国神社問題であいまいな発言を続けている。私たちはこの姿勢を批判してきた。国内はもとより中国、韓国などアジア諸国が納得するのは難しいと考えるからだ。最近、ワシントン・ポスト紙が社説で批判したように、欧米でも反発を呼びつつある。
 この安倍氏の立場を強力に後押しするのが中川昭一政調会長である。就任後の記者会見で「ぴしっと整理されている。私も同じ考えだ」と歩調をあわせた。
 中川氏は97年、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を旗揚げして会長になった。この時、事務局長として支えたのが安倍氏である。
 この会は、植民地支配や侵略の過去を率直に認めることを「自虐史観」と批判し、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書採択を働きかけてきた。議員の会からは高市早苗氏が沖縄・北方相に、事務局次長だった下村博文氏が官房副長官に、山谷えり子氏は教育再生担当の首相補佐官にそれぞれ起用された。
●謙虚な政権運営
 下村氏は最近、安倍氏が官邸主導で設置を検討している教育再生会議のテーマのひとつとして「自虐史観の歴史教科書はやめさせる」と語った。
 山谷氏は歴史教科書について「いまだにレーニンの言葉を守っているんでしょうか、自虐的な内容の教科書をつくっている」と述べている。
 それが、安倍氏のいう教育再生の方向性なのだろうか。教育内容への過剰な政治介入は事態を混乱させるばかりだ。
 安倍氏への世論の支持は確かに高い。
 だが、近隣国とのまともな関係づくりや、教育をめぐる問題の解決を切望する声もそこには含まれている。そのことをかみ締め、謙虚に政権運営に当たってもらわなければ困る。
http://www.asahi.com/paper/editorial20060927.html